ない債務整理 借金返済|3 弁護人の主張に対する検討 (1) 収賄事件と談合事件の間に因果関係が認められないとの主張について 弁護人は,事前収賄及び第三者供賄の見返りとして,被告人が,部下職員 にB1設計の受注への便宜を指示したのであれば,被告人が知事に就任した 直後から,B1設計の指名・受注は大幅に増加するはずであるのに,そのよ うな結果にはなっていないし,また,知事は,県庁では人事権を持つ絶対的 な権力者であるから,真実,被告人が落札・受注を指示したとすればこれが 実現しないはずはないのに,そのような結果にはなっておらず,これらは, 被告人が部下職員に,B1設計への落札・受注指示をしていないことの証左 である旨主張する。

借金返済の談合から債務整理であるから,被 告人やA2が,知事就任直後の時期から,B1設計の大幅な受注増を意図し ていたとは考え難く,県庁内を被告人の体制に変えていく中でで,徐々に,B 1設計の受注を増やしていくことを考えていたとみるのが自然でである。」


下田大橋の件で,「これ以上やるとやはり被告人とA2の関係も疑われて いるということもあったので,ここは被告人の指示に従うわけにはいかない と思い,県の意向を示すことはやめようということで動かなかった。
」と証 65 言するように,被告人の意向を認識しつつも,当時の部下職員が,「天の 声」の重大性を認識し,独自の判断で慎重な行動を取っていたことも認めら れる。
以上のような事情に照らせば,知事就任直後の平成15年度及び平成16 年度において,B1設計の受注件数が大幅に増加していないことをもって, 被告人によるB1設計の受注指示があったとの認定が影響を受けるものでは ない。
なお,平成16年度は,B1設計は,受注件数は3件ながら,受注額 は平成13年度と平成14年度を上回っている。
(2) A2の脅しに屈する理由がないとの主張について 弁護人は,起訴されている3件の談合事件は,平成17年6月ころから始 まったA2の被告人に対する脅し行為後のものであるが,当時,被告人は, A2からの選挙資金等を完済していたため,A2の脅しを気にも留めておら ず,A2を懐柔すべく,部下職員にB1設計の受注への便宜を指示したこと はない旨主張する。
しかし,既に判断したとおり,平成17年6月当時,被告人が,A2から の選挙資金等を完済していたなどという事実は認められず,前記弁護人の主 張は,その前提を欠く。
被告人は,A2からの事前収賄及び第三者供賄に係 る請託を受諾していた上,平成17年夏ころから,A2が,対立候補への寝 返りや被告人の署名が入った借用書をばらまくことを示唆したり,これまで 提供を受けた資金の返還を求めたり,年間8000万円という具体的な金額 を掲げた受注要請をしたりするなどのプレッシャーを被告人にかけてきてい たことから,A2を懐柔する必要性に迫られていたのであって,被告人が, B1設計の受注への便宜を図る理由や動機を有していたことは明らかである。
そして,平成17年7月以降,B1設計は9件受注し,受注額も5832万 円と急激に伸びた。
(3) 部下職員が被告人の真意を誤解したとの主張について 66 ア弁護人は,B1設計に関して,被告人が部下職員に指示したのは,入札 制度の透明化・活性化を図るために,同社を指名に入れてやることだけで あったのに,部下職員らは,人事上の厚遇を期待するなどして,自分なり の解釈で,被告人の指示をB1設計に受注させる旨の指示であると読み間 違えて官製談合に及んだものである旨主張し,被告人も,「新規業者を参 入させ談合ではなくたたき合いになることによって,落札価格が低下する ことを期待して,A3に,B1設計を指名に入れられるのであれば入れて やってほしいということは話したが,受注指示をしたことはない。
」, 「A6に,『A2は,土木の設計もできると言っているし,環境森林部の 所管で仕事があるか調べてくれ。
』と言っただけで,受注指示をしたこと はない。
土木部などへ話をしてくれなどと頼んだこともない。
」などと, 受注指示を否認する供述をしている。
しかし,被告人がA3に,平成16年6月ころから,「A2が仕事が欲 しいと言っている。
なんとかできんな。
」と指示したり,平成16年度の 下田大橋の業務の際,「A2が取れるようにしてやってくれ。
」,「指名 したからと言ったって結果がすべてよ。
」などと言ったり,平成17年6 月ころ,B1設計の受注実績等の一覧表を示しながら,「大手の業者の分 を回せば8000万円ぐらい取らせられるがな。
」と言ったなどというそ の言葉は,B1設計を指名に入れることにとどまる指示内容ではなく,B 1設計の受注調整を求めるものであることは明らかである。


なお,被告人は,上記のような言葉をA3に言ったことを否定する供述 をしているが,A3証言やこれを裏付ける各証言等に反するもので,信用 できない。
被告人は,A6に土木部との調整を指示したことはない旨供述するが, A6証言やこれを裏付ける各証言等に反するものである上,A6が被告人 の指示もないのに,自分の所管である環境森林部を超えて,土木部のA5 67 や農政水産部のA9に対してまで,B1設計の受注へ向けての働き掛けを 行うなどというのは不自然であって,上記被告人供述は信用できない。
そ して,被告人がA6に,所管以外の公共事業担当部署との調整を指示した という事実は,被告人が土木部にも精通しているA6に,B1設計の受注 調整の窓口となることを求めたものとみるのが自然で合理的である。
イまた,弁護人は,被告人は,A6,A9,A5に,「B1設計をよろし く頼むな。
」,「B1のことを頼んどくね。
」,「社長があいさつに行く かもしれないから親切丁寧に対応してくれ。
」などと言ったにすぎず,落 札・受注させることを明言していない旨主張する。
しかし,A6が,「県庁のトップである知事が,一請負業者であるB1 設計をよろしく頼むなというのであるから,普通の意味とは違うと思っ た。
」と証言し,A9が,「知事が直接電話を掛けてきて,しかも個別の 業者名を挙げて親切丁寧に対応するようにと言うことは非常に特別なこと だった。
」と証言し,A5が,「名指しでB1設計を頼むと言われたので, 指名だけさせろというふうには受け止められない。
」と証言しているよう に,県政のトップである被告人が,わざわざ公共事業の担当職員らに対し, 直接,特定の請負業者名を挙げた上でその対応を依頼するなどということ は不自然であり,その事実経過や状況等に照らして,被告人が,部下職員 にB1設計の落札・受注を指示したものとみるのが自然で合理的である。
ウまた,平成17年度,被告人は,3回にわたって,A3に指示してB1 設計の受注状況を報告させるなど,被告人が,B1設計の受注状況に強い 関心を有していたことは明らかである。
エこれに加えて,前記のとおり,被告人には,B1設計の受注への便宜を 図る強い動機があることを併せ考えれば,被告人の部下職員に対する指示 内容が,B1設計を指名に入れられるのであれば指名に入れるという程度 のものであったなどとは到底認められず,検察官主張のとおり,B1設計 68 に県発注の測量設計業務等を受注させるための指示内容であったことは明 らかである。
(4) そのほか,弁護人が縷々主張する点を検討しても,前記第2,1の認定 を覆すものではない。
4 結論 よって,弁護人が主張するところを踏まえても,検察官が主張するとおり, 被告人が,A3及びA6らに対し,B1設計に県発注の測量設計業務等を受注 させるように指示し,その結果,平成17年度に施行された橋梁維持事業及び 災害復旧事業並びに平成18年度に施行された麓川橋梁詳細設計業務といった 判示各業務を,B1設計が談合により落札・受注したことが認められる。
(法令の適用) 罰条 第1につき刑法60条,平成15年法律第138号による改正前の刑法197 条2項 第2につき包括して刑法197条の2 第3ないし第5につきいずれも刑法60条,96条の3第2項 刑種の選択 第3ないし第5につきそれぞれ懲役刑 併合罪加重 刑法45条前段,47条本文,10条(刑及び犯情の最も重い第1の罪の刑に 法定の加重) 未決勾留日数の算入 刑法21条 追徴 刑法197条の5後段 訴訟費用の不負担 69 刑事訴訟法181条1項ただし書 (量刑の理由) 本件は,被告人が,政治的指南役であったA1と共謀し,知事就任前,B1設計 のA2から,賄賂である現金2000万円を収受した事前収賄の事案(第1),知 事就任後,A2に依頼し,賄賂である顧問料等名目の現金を毎月A1へ振込入金さ せて合計1026万円を供与させた第三者供賄の事案(第2)及び,A2や県の部 下職員らと共謀して,県発注業務の指名競争入札に際し,入札の公正な価格を害す る目的で,予め落札予定業者をB1設計とする旨の談合をした競売入札妨害3件の 事案(第3ないし第5)である。
第1の事前収賄は,選挙戦のいわゆる終戦処理費用を清算する必要等から,被告 人がA1に2000万円の資金調達を要求し,これを受けて,A1がA2に資金提 供を依頼したところ,これに応じたA2が,その見返りとして,知事就任後に被告 人がB1設計の落札・受注についての有利便宜な取り計らいをすることを求めたの に対し,被告人がこれを受諾したというものである。
第2の第三者供賄は,被告人 が,A1に後援会の事務局長を辞任させるに際して5000万円を提供したものの, 5000万円だけではA1が意趣返しに及ぶのではないかと不安に感じ,A2にA 1への月々の現金供与を依頼し,これに応じたA2が,その見返りとして,B1設 計の落札・受注についての有利便宜な取り計らいと,ゼネコン口利きへの協力を求 めたのに対し,被告人がいずれも受諾したというものである。
被告人は,選挙戦前から,知事に就任した後の被告人からの便宜供与を期待する A2から,多額の選挙資金の提供を継続的に受け,A1の事務局長辞任問題に際し ても,A2に,A1へ提供する5000万円の債務を負担させた上,ゼネコンの口 利きをさせることによって返済原資を賄うことを企図するなど,本件の背景には, 被告人自ら積極的にA2と金銭的な癒着を深めてきたという事情がある。


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A3
下田
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証言するところや,A1が,A2に対し,被告人体制が できるまでは無理はできない旨述べていたところとも符合する。 また,A14が,「被告人が,B1設計に受注させる意向を持っていたこ とは分かったが,県の意向を出すということは,指名業者間で反発が起こり, それが公の知るところになるなど大きな混乱が生じるし,私自身,そういっ た不正なことにかかわりたくないという思いから,県の意向を示すことはし なかった。」と証言し,A13が,「被告人から,B1設計に仕事を取らせ てやってほしいと頼まれたが,受注させるところまではできないと思い,B 1設計を指名に入れるようにという限度で指示を出した。